ゆいブログ

うれしかなし②

続、悲しかった事、その①です。

先日、長い間闘病してきて

亡くなってしまった患者様についてです。

その患者様は

やや高齢の大人しいチワワちゃんで

数年前に、首が異様に腫れてきた

との事で来院されました。

首が腫れてきたと言われる場合

考えられるのが

場所的にリンパ節、唾液腺、甲状腺

このどれかの病気が疑われます。

各種検査から

甲状腺癌が強く疑われました。

そこで、手術を前提に

全身の精密検査をした所

心臓がパンパンに肥大していて

動脈管開存症という

希な先天性の奇形がある事が分かりました。

全身麻酔をかける際に

心臓病がある事は大きなリスクになります。

ただ、甲状腺癌は外科手術が

治療の第一選択肢になるので

このまま放っておく訳にはいきません。

幸い、動脈管開存症の程度は

めちゃめちゃ重度では無く

心臓の機能的にチャンスはあると判断し

飼い主様御家族としっかり話し合いを重ねました。

その結果、リスクを重々御理解頂いた上で

手術を希望されたので

先ずは心臓病に対して

ある程度の期間

内科治療を優先させて貰いました。

そして、手術の前から

心臓の負担を極力減らす様に

麻酔計画を綿密に立てて

手術に望みました。

こういったケースでは

手術中の麻酔がハラハラしますが

幸い大きなトラブルも無く

無事に手術を終える事が出来ました。

その後の経過はすこぶる順調で

心臓の治療を継続していました。

そうして、約3年位経ったある日

再び、同じ場所が腫れてきてしまいました。

そう、甲状腺癌の再発です。

これは

甲状腺癌の治療後によくあるケースで

術後数年経過してからの転移再発です。

良い風に考えれば

それだけ長生き出来たって事なんですが

再発でしかも更に年齢を重ねているので

当然、手術リスクは初回よりも上がります。

またまた飼い主様と

しっかり相談をした所、再び手術する事を

決断して頂きました。

とても信頼して頂いている事は

勿論ありがたいのですが

高齢になって2度目の手術でしたので

当然、初回よりもドキドキハラハラしました。

それでも何とか再び

手術を終える事が出来ました。

さあ、要約これで終わり…ではありません。

これからがまた長い闘いの始まりでした。

再発した癌が

既にリンパ節に転移していていたんです。

それでまたまた飼い主様と話し合い

色々な提案をさせて頂いた結果

更なる治療を望まれました。

それは手術、抗癌剤、放射線治療に次ぐ

治療選択肢「分子標的薬」です。

この薬は、数年前から

我々が使用出来るようになった新薬です。

厳密に言うと効能外ですが

ここ最近で、様々な癌に効果が認められていて

甲状腺癌もその中の一つです。

画期的な薬ではあるんですが

副作用がかなりの頻度で起こり安く

使用法に様々な難点があります。

それでも

大きな副作用に苦しむ事も無く

この治療も長い間耐えてくれて

癌はその間、ばっちり制御する事が出来ました。

そんな中

遂に、心臓の方に限界が来てしまい

先日、亡くなられてしまいました。

これだけの長期間

やれる事をとことんやって

大きな苦しみも無く

大往生してくれました。

寂しいですが

確実に飼い主様と一緒に過ごせる時間を

最大限引き延ばす事が出来た事は

きっとワンちゃんにとっても幸せだった

と思います(ノ_・。)