ゆいブログ
せきずいなんかしょう
先日、当院の患者様で起こった
とても恐ろしい病気について
お話ししたいと思います。
今回は少し長文です。
患者様は
まだ3歳と若く、とても可愛い
ダックスフンド系の雑種で
突然、歩けなくなった
との事で緊急来院されました。
来院時は、まだ少し元気もあったのですが
完全に両方の後ろ足が麻痺している
状態でした。
(痛覚もほぼ消失していたので
最重症に相当するグレード5!)
犬種と症状から明らかに
「椎間板ヘルニア」を疑うんですが
パッと診た瞬間
非常に嫌な予感を感じました。
それは先ず、若過ぎる年齢です。
通常の椎間板ヘルニアの
起こり易い年齢は大体7~9歳です。
勿論、3歳位から起こり得るとは
言われていますが
やはり若齢は稀です。
(ですが、、、ちなみに
当院での最少年齢は6ヶ月齢!)
それと、麻痺があまりに急激に起きている事
以上の事から
ある病気が頭をよぎりました。
そう「進行性脊髄軟化症」です。
椎間板ヘルニアで
グレード5の約1割に起こり得る難病で
現在、有効な治療法がありません。
しかも最悪な事にたった数日(5~7日)で
ほぼ間違いなく死に至ります。
え??
椎間板ヘルニアって
最悪歩けなくなるだけじゃないの?
まさか命に関わるなんて…。
と通常は思われますよね。
この病気は
椎間板ヘルニアがあまりに
急激で強く起こる為に
神経が壊死融解(細胞死)を起こします。
そして
それが徐々に脊髄全体に進行して
全身に麻痺が及んでしまい
最終的には
呼吸する神経も麻痺するので
呼吸停止して亡くなってしまいます。
患者様には
即入院してもらい
複数の内科治療を開始しました。
…が、翌日には
神経的な反応がやや低下して
2日目には
上半身も起こせない状態に
なってしまいました。
進行性脊髄軟化症は
MRIで、ほぼ確定的な診断がつくので
飼い主様との相談の上
大学病院神経科に紹介する事になりました。
一度仮退院して
一晩家でゆっくり過ごして貰ってから
大学へ行ってもらったのですが
既に家に居る時から、上半身の動きが
どんどん悪くなっていたそうです。
大学でのMRI検査にて
(弱っていたので無麻酔検査でした)
進行性脊髄軟化症が確定したのですが
その後に様態が急変して
呼吸停止して亡くなってしまいました。
発症してからちょうど5日目の事でした。
あまりに早過ぎて、飼い主様の心の準備が出来無いのが
この病気の残酷な所です。
自分は過去に、この病気で何度か大切な患者様を亡くしています。
病気が、困難であればある程
それに立ち向かう闘志がフツフツと湧いてくるんですが
この病気は、出会った瞬間に圧倒的な敗北感を味わいます。
自分も相当なショックを受けますが
当然、飼い主様のメンタルのダメージは計り知れないと思います。
いつも飼い主様への心のケアで悩みます。
そして、おかけする言葉に詰まってしまいます。
ダックスフンド系で若齢で
急激に起こる椎間板ヘルニアには
こんな恐ろしい病気もあるんです。。。