ゆいブログ

こうつうじこ

先日、ある心優しい飼い主様が

 

田んぼの中に落ちていた

瀕死の猫ちゃんを連れて来院されました。

 

猫ちゃんは、明らかに交通事故で轢かれた直後でした。

 

 

飼い主様は、通勤途中でその子を発見したので

 

急遽仕事を休みにして、しかも猫ちゃんにガブガブに手を噛まれて

 

手が血まみれでバンバンに腫れた状態でも、必死に車に乗せて来院されました。

 

 

 

 

 

猫ちゃんは、身体の損傷が激しく

 

お尻から、尻尾にかけての皮膚は完全に剥がれていて、中の肉が剥き出しになっていました。

 

 

そして、後ろ足はバッキバキに(複雑)骨折していて、呼吸もままならない状態でした。

 

 

各種検査から、膀胱は無事でしたが

肝臓と肺の損傷も認められました。

 

特に、肺挫傷が酷く

胸の中に空気が漏れてしまい(気胸)

呼吸がどんどん苦しくなっていく、とても厳しい状況でした。

 

 

 

 

飼い主様は、費用が幾らかかっても構わないから

 何とか、出来る限りの治療をして欲しいとの事でした。

 

 

 そこで

他の患者様に影響する様な、各種伝染病が無い事を検査で確認した上で、治療を開始しました。

(木曜日の午前1番の患者様だったので、多くの患者様に、この緊急の対応で、しばらくお待ち頂いた事に感謝致します)

 

 

先ずは、胸の中に溜まった、空気をある程度取り除き

 (エコーで肺の動きを見ながら、胸に針を刺して空気を抜きます) 

そして、田んぼの泥で汚れてボロボロになっている身体を綺麗にして

 

剥き出しになった傷口の洗浄と、手当てをしました。

 

鎮痛剤で、少し落ち着いたので

診察室にある重症患者様様の入院室で点滴を開始しました。

 

 

 

それでも、入院二日目の朝から呼吸状態がどんどん悪化していき

 

胸に空気を抜ける管(ドレーン)を設置して、頻繁に空気を抜く治療を開始したんですが…

しばらくして、呼吸停止して亡くなってしまいました。

とても残念ですが

全力を尽くしても、どうしても助けてあげる事が出来ませんでした。

猫ちゃんの、最期の時間は

苦しそうにしている身体を擦って

「ホントによく頑張ったね。

もう、無理しなくても良いからね。

人間のせいで、こんな痛くて、苦しい思いをさせてしまってごめんね。

…助けてあげれなくて、ホントにごめんね。」

と言う事しか出来ませんでした。

過去にも、交通事故で亡くなってしまった

患者様を何度か経験していますが

毎回、ホントに胸が締め付けられる思いをします。

我々は、ワンちゃん猫ちゃんが

健康で、少しでも長生き出来る様に

日々、様々な困難な病気と闘っていますが

交通事故は、人間のせいで

意図も簡単に、命が奪われてしまいます。

特に猫ちゃんは、身体が小さく車からは見えにくい為に

轢かれるとほぼ致命傷になってしまいます。

車に乗るからには、全ての運転手は

車が人間含め全ての動物には凶器になる事を、常に意識しなければいけないと思います。

この世から、少しでもこんな悲惨な交通事故が、減る事を切に願っています。

飼い主様には

「この子は、あのまま田んぼに居たら、きっと人間を憎んで亡くなっていました。

けれど、飼い主様に拾われて病院に連れて来て貰った事で、最期は人間の温かい気持ちを感じる事が出来たと思います。

それだけでも、とても大きな意味があったと思いますよ。」

と伝えました。

 そして

「この子の死は決して無駄にしません。

これからも、今回の交通事故の恐ろしさを伝えて

猫ちゃんを外に出している飼い主様に

強く、家猫にする事を勧めていきます!」

と誓いました。