ゆいブログ

きょだいしょくどう

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今回は、ある希な病気についてです
先日
当院の患者様が、急に何度も嘔吐をする様になってしまった
との事で来院されました
ワンちゃんが、嘔吐で動物病院に来院するケ-スは非常に多いです
その原因は多岐に渡り
異物摂食、食事の変更、ストレス、空腹による胃散過多、胃腸の運動低下などなど…
高齢になると、腫瘍、内臓疾患も視野に入れなければいけません
一般的には、単純な吐き気止めの治療で治ってしまう事が多いですが
ワンちゃんの様子、吐き方、年齢、犬種、環境などなど…
短時間でそれらを統合的に考え、原因を絞り込む事が重要になります
以前も、単なる嘔吐で来院して
「アジソン病」という稀な病気だった患者様について、ブログでアップした事がありましたが
時折、とんでもない病気が潜んでいる事があるので要注意です
今回の患者様は
年齢は、それ程高齢でも無く中年齢
症状は、結構酷く、一日に多くて10回位吐く事もあり
吐くタイミングは、食後比較的短時間で、未消化物がメイン
これらの情報を
頭の中で瞬時に整理して、ピーンと導き出した答えは2つ
①異物閉塞(食道~小腸)
②食道疾患
ただ、この患者様
膀胱結石の手術歴があり
食事管理をしっかり行っている飼い主様だったので
①<②かなぁ、と思いつつ
即、レントゲン検査へ
(①>②なら、エコー検査です)
すると、やはり食道拡張らしき怪しい所見が…
食道内異物の有無と、拡張の程度を調べる為に
ドライフードをバリムウに浸して食べさせて、その直後にレントゲン検査を行い、再度食道の確認をしました
すると、異物は見当たらず
重度の拡張のみ認められました
いわゆる、「巨大食道症」です
巨大食道症とは、何等かの原因で
食道が異常に拡張してしまい、食事が上手く胃腸へ流れていかなくなる病気です
そして、飽くまでも巨大食道症とは
症状の事であって、これまた幾つかの原因に分かれます
①重度食道炎
②先天性(血管異常)
③内分泌疾患(甲状腺機能低下症、アジソン病)
④局所型重症筋無力症
そして上記の全てが否定出来たら⑤特発性(原因不明)
です
①は猛烈な嘔吐でも、そう簡単にはなりません
②は生れつき吐きまくります
③は血液検査とホルモン測定で診断可能で
④もその抗体価測定(血液)で診断可能です
(ただ、④については
例えその病気だったとしても、3~4割位は検査で検出が出来ないと言われています)
自分の経験で、この病気に出会ったのはこれが二度目です
一度目は、十年以上前の事ですが
自分の経験がまだ浅く、とても苦労したので、今でも詳細に記憶しています
(その時に、この病気についてトコトン勉強した資料が今でも残っています)
一度目の患者様も
勿論あらゆる検査を行ったのですが全て該当せず
⑤の特発性と診断して治療しました
たまたま先日、当時の同僚と話す機会があって
偶然、その患者様の話しになったんですが
何と今でも治療を継続して、元気にしているとの事でとても驚きました
何故ならこの病気
なかなか治療が困難で、結局多くのワンちゃんが、治療途中に誤えん性肺炎で亡くなってしまうからです
今回の患者様は
何と④の検査で診断がつきました!
「局所型重症筋無力症」です
(身体の一部の筋肉(食道)が、機能しなくなる病気)
この病気なら、色々と治療薬があり
上手くいけば半年位で治ってしまう事もあります
ワンちゃん想いで、とても熱心な飼い主様なので
完治を目指し「ゆいま-る」の精神で、これからも協力して病気と闘っていきます
原因がなんであっても
この病気の患者様に必須な食事法があります
それが、食事を高い台に載せて、画像の様に身体を立たせて食べさせる方法です
そして、食後も抱っこをしたり、箱に入れたりして
食事が、食道へ逆流しない様にしばらく立たせる事が必要で
これが毎食となると、結構大変なんです(ーー;)