ゆいブログ
けとあし
今回は、ワンちゃんネコちゃんでも人間と同じ様に起こる病気
「糖尿病」についてお話したいと思います。
実は先週まるまる1週間
ほぼ毎日夜通し徹夜で看病していた患者様(ネコちゃん)がいらっしゃいます。
その患者様が、糖尿病が進行してしまった
「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)+高浸透圧高血糖症候群(HHS)」
という状態でした。
DKAとは、体液バランスを崩してしまった状態(アシドーシス)が顕著な病態で
HHSとは、脱水が顕著な病態です。
どちらも放置すれば命の危険性の高い、緊急性疾患です。
この両者が混ざった病態が最強最悪なのですが
今回は、正にこの二つの病態が揃っていました。
この病態、1つでも致死率が高い疾患なので
2つ揃っていると、治療がハイパー困難になります。
恐らく、我々獣医師が行うあらゆる分野の内科治療の中でも
トップクラスで大変な治療になります。
何が大変かと言うと
①知識力②計算力③経験力④体力(根性)
この全てが、治療には必須だからです。
①インスリン治療が基本になるのですが
インスリンは画像でアップした通り
様々な種類(当院は5種類)があります。
(*今までは人用インスリンを使用していましたが
つい先日、待望の動物用インスリンが発売されました!)
これらのインスリンそれぞれの特性を熟考して
様々な使用法を駆使して治療します。
ここでとても大事になるのが、「生理学」の知識です。
動物の体内における、糖代謝一連の流れを
常に頭で思い浮かべながら
治療方針を組み立てていくのがメチャメチャ大事なんです。
②インスリンを使用するときに必ず
カルシウム、リン、カリウムと言った
ミネラルバランスの調節が超重要になります。
このバランスと崩すと命に関わるからです。
これらを、インスリンと共に点滴で補充するのですが
患者様の状態をモニターしながら
数時間おきに点滴量、速度を適宜調節して
それらに合わせてこれらのミネラルの投与量を都度、計算します。
この計算が頭がパンパンになる程、複雑なんです。
③この治療は、どの位インスリンを投与すると
どう反応するか等、予測が重要なのですが
それには、経験値によるさじ加減が必要になります。
(自分は勤務医時代に
同じ様な状況のネコちゃんの治療を担当した事があり
1か月近く、入院治療をした経験があります。
その時に、糖尿病に関して、むちゃくちゃ勉強した内容を
今でも鮮明に覚えています)
④そして、この体力…
はっきり言ってこれが無ければ①~③が揃っていても
治療は成り立ちません。
何故なら、1~3時間おきに
採血をして、血糖値・ミネラルを確認し
インスリンや点滴の量を調節する必要があるからです。
これが、状態の悪い場合、24時間フルで行います。
え?スタッフの居ない夜中はどう採血するの?と思いますよね。
夜間は、もちろん自分一人で行うのですが
その場合は、簡易血糖測定器を利用します。
ネコちゃんの耳の縁に、針をチクっと刺して一滴の血液で検査をします。
これが、ネコちゃんが元気になってくると結構嫌がって
顔を背けたりされて、まあまあ大変なんです。
今回のネコちゃんはかなり状態が悪かったので
1週間ほぼ毎晩、2~3時間おきに(夜中の0:00、3:00、6:00)採血しました。
勿論、それと同時に日々の診療や検査・手術をこなしていたので
後半は流石に寝不足でフラフラになってきました。
それでも、ビタミンドリンクを飲んだり眠気覚ましに夜中に筋トレをしたり
とにかく根性で何とか乗り切りました。
必死の治療を続けた甲斐あって
治療して7日目に劇的に回復して、8日目に無事退院出来ました。
7日目になって急に、自ら食事をし出した時には感動のあまり
一人で歓声を上げて、ネコちゃんを抱きしめていました。
…と、この話には続きがあって
その後ネコちゃんは順調に回復しているのですが
ネコちゃんの退院の日に、何とびっくり
入れ替えで、新規のワンちゃんの糖尿病の患者様が来院されました。
1~2年に1件位のペースでしか来院されない糖尿病の患者様が
偶然にも重なるというミラクルでした。
きっと、神様が
「ネコちゃん上手くいったんだから、その調子で
次は、ワンちゃんを治療してみんしゃい」
と自分に言っているのだと思いました(;一_一)